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雪山やバックカントリースキーでの遭難事故を防ぐには?最新テクノロジーを使った遭難対策まとめ【2024年版】

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2023年もいよいよ大詰めですね。 12月に入って一気に寒さが増してきて、「冬がやってきた!」と感じます。

これだけ寒くなると 「山に行くのはお休みして、来年春、暖かくなったらまた行こう!」 と思うのですが、そう思いながら心の片隅で気になることがあります・・・

それは 「雪山登山」 です。

「一度は白化粧をした山に登って、きれいな景色を存分に堪能してみたい!」

なんて思ったりもするのですが、たくさんの装備が必要だったり、 毎年のように流れてくる遭難事故のニュースをみていると 怖くてなかなかチャレンジすることができません。

バックカントリースキーも興味はありますが、さらに難易度は高いような気がします。

「雪山にはいってみたい!でも、遭難は絶対にしたくない!!!」

そんな方に向けて、今回は雪山登山やバックカントリーでの遭難事故を防ぐために、2024年現在の最新テクノロジーでどんな対策ができるのかまとめてみました。

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日本の山岳遭難件数と原因

まずは日本の山岳遭難の現状についてみてみましょう。

日本では年間3000件程度の山岳遭難事故が発生しています。令和4年度は3015件の遭難事故が発生し、遭難者数は3506人にものぼります。そのうち、327人の方が死亡、行方不明となっています。

コロナ禍で減少傾向が続いていたものの、令和3年から再び増加に転じて、令和4年は過去最高の数値となっています。遭難の原因としては1位が「道迷い」2位が「滑落」3位が「転倒」と続きます。上位3つの原因が山岳遭難のおよそ7割を占めています。

令和4年における山岳遭難の概況-警察庁

雪山での遭難事故の現状

冬山シーズン(12月〜2月)においては令和4年には年間367件の遭難事故が発生しており、遭難者数は468人となっております。そのうち死者・行方不明者は35名です。

一見すると、冬山での遭難事故は全体の10%程度で少ないように見えます。しかし、冬山に登る登山者は夏山よりも数が少なく、難易度が高いゆえに初心者よりも熟練者が多くのぼることが考えられます。にも関わらず、年間で300件以上の事故が起きており、遭難の確率は夏山よりも高い可能性があります。

遭難の原因は山岳遭難全体の割合とほぼ変わらず、「道迷い」「滑落」「転倒」が占めています。雪山の遭難事故といえば「雪崩」が多いのでは?!と思っていましたが、過去5年間の遭難状況をみてみると、「雪崩」は1.3%と想像していたよりも少ない結果でした。(だからと言って、安心というわけではないですが・・・)

冬山登山の警告文 - 山岳遭難対策中央協議会

また、バックカントリースキーについても年間100件程度の事故が報告されており、10名弱の方が命を落としています。

雪山遭難の特徴

雪崩以外にも夏山にはない、雪山の特徴的な現象として、「ホワイトアウト」「リングワンダリング」などが挙げられます。 ホワイトアウトは雪や濃霧により周りの視界が奪われ、方向・高度・地形の起伏などが識別できなくなる現象です。自分自身の現在地がわからなくなってしまうため、道迷いになったり、足元が見えずに転倒や滑落をしてしまう危険性があります。

リングワンダリングは方向感覚を失い、無意識のうちに円を描くように同一地点をさまよい歩く現象のことをいいます。 このような現象に襲われても自分の位置がちゃんとわかるように後述のGPS地図アプリやGPS端末などは持って必ず携帯しておきたいですね。

【やっぱり基本が大切!】登山届の提出・身近な人には行程を伝えておく・・・!

最新テクノロジーをお伝えする前に、重要なことは登山届をきっちりと提出しておくことです。もし仮に登山届を提出していないと遭難の発覚が遅れてしまったり、捜査範囲が広がってしまい救助が難航する可能性があります。

現在は 山と自然ネットワーク 「コンパス」 や「YAMAP」「ヤマレコ」のアプリなどからも登山計画書をつくり、登山届として提出することができるので、ぜひ活用してみてください。

また、家族や友人など、身近な人には登山をする日時や通るルートなどを最低限伝えてから山に入ることも心がけましょう。


最新テクノロジーを使った遭難対策まとめ【2024年版】

ここからは、雪山登山やバックカントリースキーでの遭難対策として使える最新テクノロジーをご紹介します。

まず前提として、それぞれの方法には特徴があり、役に立つ場面が違います。

  • 遭難を未然に防いでくれるもの
  • 遭難直後に役立つもの
  • 遭難後の救助に役立つもの

「これさえ持っていれば安心」というわけではなく、組み合わせて携帯することでより助かる可能性を高めてくれます。ぜひ、ご自身の山行スタイルに合わせてお選びください。

今すぐダウンロード! GPS地図アプリ

みなさんのスマホには以下のアプリのどれかをダウンロードされていますでしょうか?

GPS地図アプリはスマホのGPS機能を使い、ご自身の居場所を教えてくれるものです。アプリを見ると現在地がわかります。遭難の多くの原因は「道迷い」でしたが、地図アプリを小まめにみながら進む習慣を付ければ、「道迷い」が原因の遭難を減らすことができます。

上記のアプリにはそれぞれ特徴はありますが、現在地を知る機能は無料で使用することができます。登山ルートを地図に重ねることもできますので、もし、まだ地図アプリをダウンロードしたことがないという人がいれば、今すぐダウンロードしてください。

YAMAHACKさんが比較記事でわかりやすく違いを解説されているので、こちらの記事もぜひ読んでみてください。

地図アプリを使用するにあたってスマホの電池が早く消耗してしまう場合があるので、モバイルバッテリーと充電コードを必ず持ってきましょう。

遭難救助活動が始まってから活躍するココヘリ

ココヘリは、15万人がすでに加入している山岳遭難対策制度です。

加入することによって発信機(920メガヘルツ帯の電波とBluetoothを使用した小型ビーコン)が無償貸与されます。発信機は定期的に電波を発信しており、捜索時には、専用受信機を積んだヘリコプターが最長16km先から電波を捕捉し、携帯が圏外の地点などでも位置を特定することができます。

遭難して通報があったあと、ヘリが飛んでアンテナで捜索を行い、場所を特定してくれます。(その時は救助は行われません)

その後、居場所が警察や消防に共有され、救助活動が始まります。ヘリによって位置を特定するため、夜間や悪天候の場合にはヘリが飛べず、位置の特定に時間がかかる場合もあります。

会員本人、またはご家族からの通報を24時間365日受け付けていたり、捜査・救助費用の負担や補償サービスなどが充実しているのは大きなメリットだと言えるでしょう。

「遭難してしまった」という時にサポートを受けたり、捜査や救助で役に立つのがココヘリの大きな特徴です。

  • ココヘリ 公式HP
  • 入会金:3,300円
  • 年会費:5,500円
  • 会員紹介や通販利用などの割引あり

雪崩発生直後に巻き込まれた仲間を救う!雪崩ビーコン

雪崩ビーコンはその名の通り、雪崩に巻き込まれた同行者を救出するためのビーコンです。登山者一人一人が携帯することによって、雪崩に巻き込まれた際に、埋もれた仲間の捜索・救出を行うことができます。特にバックカントリースキーをする人は携帯しておく方が良いでしょう。

雪崩ビーコンは457kHzの電波を使用しており、数十メートルほどの範囲に電波が届きます。送受信機能がついており、登山時には全員が送信モードで携帯し、雪崩が発生した場合は捜索者がアンテナを受信モードに切り替えて、雪崩に巻き込まれた仲間の捜索を行います。

位置が特定できたら、プローブ(ゾンデ)と呼ばれる長い棒を雪面から刺して、埋没場所をさらに細かく特定し、スノーショベルを使って雪を掘り起こします。

こうした救助を行うためには、基本的にグループで行動し、各自が雪崩ビーコンを持ち、プローブ・スノーショベルをセットで携行しておく必要があります。

雪崩で埋まってしまった場合、18分以内に救助されれば、生存率は91%。しかし、時間がたつにつれて生存率は下がり、35分後では34%となってしまいます。雪崩での遭難では、発生直後に、埋まってしまった人を早急に救出する必要があります。

雪崩ビーコンの規格は、国際的に共通化されており、使用するメーカーが違ってもお互いに捜索することは可能です。値段はおおよそ5〜6万円程度です。

遭難初期から中盤、終盤まで活躍するGPS端末。さらに遭難を未然に防げる可能性も!

GPS端末を使って、登山者自身が現在地やルートを確認するだけでなく、外部の人に居場所を伝えることで、より早期に遭難救助を実現したり、さらに一歩進んで、遭難を未然に防げる場合があります。

たとえば「雪山で遭難し、夜になっても帰ってこない」というケースを考えましょう。

通常は、朝になるまで捜索隊やヘリコプターによる捜索は難しいため、夜間は自力で下山するか、それが難しい場合は雪洞を掘るなどして、自力でやり過ごすしかありません。

しかし、GPS端末によって自分の位置情報が共有されている場合、明らかに「この場所にいる」ということが分かれば、場所によっては夜のうちに救助を行える場合もあります。

また、あらかじめ地図上に予定ルートを表示した上で、自分の現在地を共有しておけば、下界から見守っている家族や友人が、異変や道迷いに早期に気付ける場合もあります。

運が良ければ、自分ではまだ気付いてすらいないタイミングで、「道、間違っていない?」と電話がかかってくる、という場合もあり得るでしょう。

さらに、事故等で電話もできない場合でも、「同じ場所から動いていない」「電話をしても応答しない」という異常に早期に気付いてもらい、救助活動が早めに開始できる可能性があります。

気温の低い雪山では、できる限り早い対応が、生存確率を上げます。

このように、自分の居場所を外部の家族や友人に共有しておくことで、より早期の遭難対策が可能となる場合があります。

GPS地図アプリによる位置共有

もっとも手軽に自分の居場所を外部の人に伝える方法は、スマートフォンの活用です。

前述したジオグラフィカやYAMAPなどのGPS地図アプリには、位置情報を外部の人に伝える機能が搭載されています。

さらに、YAMAPのみまもり機能を使うと、同じYAMAPアプリを使っている人とすれ違った際に、お互いの位置情報が共有され、圏外エリアにいる場合でも他のユーザーによって位置情報が更新される機能があります。

また、こうした登山用地図アプリ以外にも、GoogleマップやSTRAVAなどでも、簡単な位置情報の共有が可能です。ただし、登山用アプリでない場合は、登山道や山の地形情報が表示されず、位置の特定や、ルートから外れているかどうかが分かりにくいというデメリットがあります。

また、アプリによっては、予定ルートが表示できなかったり、履歴が表示されないものもあり、その場合は、ルートから外れているかどうかの判断が難しかったり、順調に進んでいるのか迷っているのかが判断しにくい、といったデメリットがあります。

登山のみまもりに活用するには、予定ルートが表示でき、履歴が表示できるものを選ぶと良いでしょう。

また、スマートフォンアプリ全般に言える注意点として、位置情報共有を続けると、電池の消費が早くなってしまう点が挙げられます。スマホアプリを使う際は、必ずモバイルバッテリーの容量に余裕を持っておきましょう。

IBUKI GPS

IBUKI GPSは軽量・省電力の最新型GPS端末です。山の中でも現在地をほぼリアルタイムに共有できるためご家族やご友人に遠くから見守ってもらうことができます。

また、スマホとは別に専用端末を携帯することで、もしもの時のためにスマホのバッテリーを温存することが可能です。携帯電波を利用しているため、圏外エリアでは通信を行うことができませんが、それまでの軌跡を確認することができます。

イベント作成モードを利用すると、ライブ画面に予定のルートを表示させることができ、家族や友人に見守ってもらいながら、雪山登山やバックカントリースキーを行うことが可能となります。また、このイベントのURLを登山届に記載しておくことで、捜索が必要となった場合に警察・消防への共有もスムーズになり、捜索・救助の初期動作が早まるので無事に家に帰る可能性を高めてくれます。

更には、もし間違ったルートを進んでしまった場合、周りの人が気づいて連絡を取れれば、未然に遭難が起こるのを防ぐこともできます。

携帯電波の圏外エリアでは、端末内に一定数のログを保存し、電波が繋がった際にまとめて軌跡をアップロードします。

値段は後述する、子供用の見守り端末や衛星端末と比べると中間程度の値段です。遭難が起こる前や起こってしまった後に活躍するIBUKI GPSは横断的な雪山遭難対策だと言えるでしょう。

週末には大人が使うのもあり?!子供の見守り端末

似たようなGPS端末でお手頃なのが子供用見守り端末です。端末本体の料金が5~6000円程度で、月額利用料も500円程度と安価です。IBUKI GPS同様に携帯回線を使っているのでトラッキングなどで大きな差はありません。

ただし、子供の見守り用途のために開発されているため、基本的にあらかじめペアリングしたスマートフォンでしか、位置の確認ができません。 そのため、緊急時に捜索隊へ位置の共有を行うことが難しく、ご自身で捜索に出向くか、正確に位置を伝えられる必要があります。 また、事前にルートを登録する機能はありません。見守る人がルートから外れていないかを判断するには、見守る人にも地図やルートの知識が必要になります。

また、Googleマップなど、街用の地図が使われていることが多いため、登山道や山の地形が分からない場合も多いです。

mixi社のみてねみまりGPSやBsize社のGPS BoTなどが有名です。

ほぼ圏外が無い!衛星通信端末

IBUKI GPSや子供の見守り端末は携帯回線を使用しているため、携帯回線の圏外エリアでは、位置が更新されません。

一方、衛星通信端末は地上にある基地局やネットワークに依存せず、宇宙にある人工衛星によって通信を行うため、空がひらけている限り通信が可能です。

GarminのinReach製品は、Iridium衛星ネットワークを使用しており、全世界のほとんどのエリアをカバーしています。端末本体料金は4〜5万円程度で、ログが無制限のプランで月額5000円程度の利用料です。

inReachには、テキストメッセージの送受信機能があり、緊急時にメッセージを送信できますので、安心感があります。

同様の衛星通信端末には、SPOTという端末もあります。料金は、inReachよりは少し安価ですが、メッセージ送受信機能は搭載されていません。


まとめ : シチュエーションに合わせて、テクノロジーを活用しよう

ここまで、さまざまな雪山登山やバックカントリースキーでの遭難事故を防ぐための最新テクノロジーを紹介してきましたが、それぞれに特徴があり、活躍できる場面や性能が違ったりすることがお分かりいただけたと思います。

まとめると・・・

  • 「GPS地図アプリ」は、自身の現在地やルートが分かります。基本機能は無料です。
  • 「雪崩ビーコン」は、雪崩発生直後に雪に埋まった仲間を救助するために役立ちます。
  • 「ココヘリ」は、遭難救助活動開始後に居場所を特定するために役立ちます。
  • 「GPS端末」は遭難を未然に防いだり、遭難後の捜索・救助に役立ちます。
  • 「見守り端末」は、安価ですが、位置情報の共有が難しく、ルートなどは表示できません。
  • 「IBUKI GPS」は、中間の価格帯で位置情報の共有やルート表示が行えます。
  • 「携帯回線を使うGPS端末」は、圏外エリアでは通信ができません。
  • 「衛星通信端末」は、人工衛星によって通信を行うため、空がひらけている限り通信が可能です。
  • 「衛星通信端末」は携帯回線を使う端末よりも高価です。

最新テクノロジーの活躍するシチュエーション

正直なところ、「全部持っていく」のが一番安心ですが、それが難しい場合もありますので、その際は、ご自身の登山のスタイルに合わせて、適切なテクノロジーを選び、雪山登山やバックカントリースキーで携帯したいですね。

ぜひ、この冬は最新テクノロジーを活用して、雪山登山・バックカントリースキーを安全に楽しみましょう!

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